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グローバル世代の
ジュニア音楽教育

~世界の10代はどんな音楽的刺激を受けている?

昨今、リベラルアーツ教育やSTEAM教育といった言葉が教育現場でよく聞かれるようになりました。ここでは、これまでに取材した世界のジュニア世代の音楽教育に関する記事をご紹介します。リベラルアーツの概念を具体化する一手段として、「自分を知る、他者を知る、世界を知る」で分類しました。

Digital art exhibit

​自分の身体を知る・表現する

​呼吸を深める

呼吸は簡単に見えて、実は奥深いもの。深い呼吸ができるということは、自分の身体を上手に使えているということです。それはあらゆるパフォーマンスにも影響を及ぼします。あるジュニア国際ピアノコンクールでは、呼吸と身体の使い方を心得ているピアニストが優勝し、その資質が成人後もさらに生かされています。

独ワイマール・若いピアニストのためのリスト国際コンクール取材記

アイディアを形にする

自分のアイディアをどう生み出しますか?また、それをどう膨らませていきますか?大きな作品も、小さなモティーフを膨らませたり、積み重ねたものであったりします。一つのテーマを展開させて、膨らませていくことの面白さを味わうことは、創造の喜びに触れることなのです。

フランスの小学校での音楽創作ワークショップ

●クラシック音楽祭 in マレーシア 作曲マスタークラス

音に合わせて
身体を動かす

音楽を聴くときに身体を動かしていますか?実は、音に合わせて身体を動かすことは、知覚を研ぎ澄ませることにもつながります。パリ管弦楽団の小学生向けコンサートでは、「あるテーマが出てきたら手を挙げる」というお題が出されました。皆さん、張り切って元気に手を挙げていました!

​●色々なリズムを体感するコンサート(レ・シエクル&フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮)

パリ管弦楽団の小学生向けコンサート

「感」から「知」に変える音楽の聴き方(フランスの小学校での実験)

チャンスを探して動く

チャンスは至るところにあります。それを自ら探し、動くことも、ぜひ10代で体験したいもの。体験が積みあがれば自信となり、ネットワークも広がります。また自分が関わっている業界・世界がどのように成り立っているのか、様々な視点に身を置き、観察してみることも大事ですね。

米アスペン音楽祭アカデミー

身体全体で感じる

様々な音の刺激を身体全体で感じることは、より豊かな身体知につながります。音楽はいわば身体から発し、身体で受けとめる芸術。幼少期の音楽体験は、たとえディテールは忘れても、その時の興奮はずっと身体に残るものです。

パリ管弦楽団のファミリー向けコンサート

様々な体験をする
失敗からも学ぶ

普段とは違うアプローチをすることで、思いがけない気づきを得ることがあります。また、あえて何かを”しない、使わない”という制限を設けることで、未知の能力や創造力が発動することもあります。その過程で試行錯誤や失敗することも、より有効な方法を考えるための学びになります。

仏ピアニストのパスカル・ロジェさん

他者を知る・関わる

アーティストと呼吸を合わせる

経験豊かな音楽家との出会いは、大きな刺激になります。呼吸、身体の動かし方、音楽のとらえ方、感情表現、間の取り方、純粋な音楽への取り組み・・・様々な方向からの動機づけによって、今まで眠っていた回路にスイッチが入ることも!

●ムジカ・ムンディ室内楽アカデミー

●クラシック音楽祭inマレーシア

​全体のバランスをとる

お互いを聴きあうことは、自分と相手の役割を踏まえながら、全体の中でバランスをとっていくこと。それは、より大きな世界をともに創り上げる、ことにつながるのです。グループワークの力、協働する力は、PISAにも新指標として採り入れられています。

​●アンサンブルで培われる力

米アスペン音楽祭アカデミー 室内楽マスタークラス

お互い意見を出し合う

他者とコラボレーションするとき、意見が常に一致するとは限りません。どのようにコンセンサスを形成するのか、それには一人一人が意見を持つこと、それをお互いに出し合い、すり合わせる作業が必要になります。他者とのコラボこそ、自律精神が大事です。

●クラシック音楽祭inマレーシア 室内楽マスタークラス

ユーモアを持つ

皆で作り上げる一つの舞台。それぞれの個性やアイディアを発揮しながら、全員で創り上げるステージパフォーマンスは、楽しくてユーモアたっぷり!そしてスケールの大きさが感じられます。

ハワイ・アロハ国際音楽祭

バックグラウンドの
異なる人と共に

国籍・年齢・文化背景も異なる若い音楽家たちが、短期間で一つの音楽を創っていくのは決して容易いことではありません。それぞれ技術、呼吸、拍感、音質などにも違いがある中、頼れるものは「楽譜」だけ。どのように曲の流れを読み取り、どのようにハーモニーのバランスを取りながら、時間内に曲としてのまとまりを作っていくのか。楽譜の読み込みの深さや確かさを学ぶ、良い機会になります。

●ムジカ・ムンディ室内楽アカデミー

コラボ力は、ソロ力に

コラボレーションで培った力は、ソロに戻った時にも力を発揮します。

独ワイマール・リスト国際ジュニアコンクール

パデレフスキー国際ピアノアカデミー

世界を知る

世界中の同世代や
プロと接する

欧米では夏に音楽祭やアカデミーが頻繁に開かれています。ジュニア世代も多く参加し、同世代同志でネットワークを広げたり、一流アーティストたちとの共演機会を通して、プロならではの息遣いや音楽の進め方などを身体感覚で感じ取っています。こうした体験を積み重ねることで、自然に身体感覚が世界に近づいていきます。

カーティス音楽院夏季アカデミー

​●ちちぶ国際音楽祭

スタンフォード大出身ピアニスト

人間の歴史を学ぶ

グローバル社会の一員として、どのようなアイデンティティをもつのか。海外に出ると特に、自分自身の歩んできたルーツが大事になります。世界中で活躍するアーティストが言う通り、「個性があるから、世界の一員になれる」のです。そして、人間の歴史を学ぶことが大事。人類がどのような歩みをしてきたのか、思いを馳せてみましょう。それは音楽の歴史でもあります。

ヴァイオリニストの諏訪内晶子さん

ムジカ・ムンディ室内楽アカデミー

伊コンクール主宰のピアノ教授

視点を変える​

ちょっと視点を変えることで、予想を超えるパフォーマンスが生まれます。そんな瞬間に出会えたら思わず身を乗り出して聴いてしまうでしょう。バッハの4声の音楽を、鍵盤楽器ではなく1台のアコーディオンで演奏する姿に、7歳の子もびっくり!視点を変えることは、今まで見たことのない世界を知るきっかけにもなります。たとえば同じ曲の日本語歌詞と英語歌詞を比較する、というのも視点の転換につながります。

フランスの「バッハ・ファミリーコンサート」(レ・シエクル&フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮)

国際バカロレア校での音楽の授業

社交も楽しもう

一流アーティストとの出会いや刺激は、コンサートの後にも。社交を通して、芸術を取り巻く豊かな時間が体得できるでしょう。

リベラルアーツを知る

1つの芸術作品が、歴史上どこに位置しているのか。物事には必ず背景があり、それを探求することは、その作品が生まれた理由、その作品が後世に与えた影響など、総合的に考えることにつながります。また一見つながりがないと思われる分野同士でも、表層は異なっていても、その奥にある構造や世界観が似ていることが分かるでしょう。そうした俯瞰的な視点で考えるのがリベラルアーツです。


シュタイアー氏によるバッハ講座
伊イモラ音楽院 教授インタビュー

バッハ作品が生まれた背景を、様々な角度から問う

「僕は考えないの。

愛、愛、愛、それが全て!」

ヴァイオリニストのイヴリー・ギトリスさんの言葉です。

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