この度、『高校生のための”リベラルアーツと音楽”~ベートーヴェンに学ぶ』というオンライン教材を制作しました。高校生4名×先生の対話形式にしています。高校では今年度から7科目に探究学習が導入されましたが、これは音楽や芸術科目にとってアドバンテージではないでしょうか。それはなぜかと言いますと・・!? ぜひ「はじめに」をお読みください。 ●「目次/はじめに」
はじめに~なぜ今、リベラルアーツ? 創造の第一歩は、自由精神から VUCAと言われる現代。予測不可能な時代と言われますが、翻っていえば、新しい未来を自由に創造できる時代でもあります。では、私たちは何を手掛かりにすればよいのでしょうか? 近年、アメリカで生まれたSTEAMという概念が日本でも知られるようになりました。理数科目(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に、芸術科目(Art)を加えたものです。これは論理性や思考力が重視される理数4科目に対して、感性や感覚を育む芸術科目を加えることで、よりバランスの取れた教育を目指すものです。世界最高峰の工科大学であるマサチューセッツ工科大学(MIT)でも芸術教育に力を入れており、2022年度世界大学ランキングの「芸術・人文学分野」で第2位に入っています。つまり、科学技術が発達するほど、それを扱う人間理解が求められるようになるのです。科学技術は日進月歩の勢いで発達していますが、果たして人間理解は進んでいるのでしょうか、という逆説的な問いがその背景にあります。「科学は世界がどう機能するかを研究するが、人間がどう生きるべきかを決める科学的手法はない」(ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』より)という言葉が示唆するように、人間や世界のあり方を決めるのはあくまで人間であるならば、人間の発想力や意識の持ち方が何より大事ということになります。 では、音楽はそこにどのように働きかけることができるでしょうか?ハンガリーの物理化学者・社会科学者マイケル・ポランニーは、「身体や情念を含む個人の暗黙知こそ、科学的な発見を前進させてきた」と述べています。つまり私たちの感覚の中にこそ、未来への手掛かりがあります。自分の感覚に敏感であるほど、この世界や自然の様々な諸相に気づくことができるでしょう。芸術家や科学者など、未来を創造する人は、枠にとらわれない自由な感覚でこの世界を探究する人でもあります。作曲家たちも繊細かつ鋭敏な感覚をもって、まだ形にはなってない音の断片を捉え、想像力を駆使してそれらを膨らませ、音楽にしました。 未来の世界をどうしたいのか―高校生の皆さんもそのような問いに向き合ったことがあると思います。教科や分野の枠を超えて、問いかけ、探究することで、新たな視点で世界を観るきっかけになるでしょう。音楽はこの世界を感覚的に捉えたり、繊細に感じとる手掛かりになります。本教材ではベートーヴェンなどの音楽を聴きながら、高校生と先生の対話(イメージ)を通して、そのような意識を深めていきます。教科横断的なアプローチも試みました。ぜひ中高生の皆さんや教員の先生方のご参考になれば幸いです。大学生やビジネスパーソンの方にもお勧めです!
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